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BMW R100RS キャブレターOH

例年以上に慌ただしく忙しい冬が過ぎ、いよいよ春がやってきた。R100RSは特に冬の始動性が悪く、長らくR100RSに乗っていないことに気づく。今冬も仕事中心だったためにバイクに乗る機会もいじる機会も少なく、ブログを2ヶ月間も放置してしまった。

今回、ツーリングシーズンを迎えるにあたり、いよいよ重い腰を上げてキャブレターのオーバーホールと同調作業にチャレンジすることにした。なお、同調作業には、予めタペット調整を行う必要があり、こちら↓で2023年の目標として掲げたR100RSメンテナンス計画のうち、2項目を達成することになる。では、順を追ってご説明する。なお、細かな手順などについては、他のブログやメンテナンスブックを参照いただくほうが良いと思うので、それらを補う情報を中心に書いてみたい。

ゆく年くる年
2022年が終わろうとしている。 少しずつ空気感が変わりつつあるものの、相変わらずのコロナ禍に油断ができない日々が続く。身近なところで感染するケースは当たり前のようになったものの、やはり自分や家族が感染した時には、長期間にわたって仕事への影...
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取り外し

キャブレターの取り外しについては、解説がどこにもない。どのブログもメンテナンスブックも、まるでどこかの料理番組で下ごしらえした材料が「はい、こちらになります」と準備されているかのように「取り外したキャブレターがそこにある」みたいな始まり方をする。

そんなだから、全く未知の作業で、キャブレターを車体から取り外すだけでも不安だったのだが、いざやってみると、とーっても簡単だったのでひと安心。

赤丸部分の接続を解除(取り外し)し、キャブレター裏側につながっているスロットルワイヤーとチョークワイヤーの2本を外せば、キャブレターが取り外せる。ワイヤーの取り外しも見ればわかるシンプルな構造で、悩むほどのことはない。

取り外したキャブレターは、油汚れ、煤汚れがしっかり付着していて、モリモリとやる気が湧き上がるほどの薄汚れ具合だった。

ちなみに、フロートボウルに少量のガソリンが溜まっており、最初に取り外した左側キャブレターはウエスでガソリンを吸い取り廃棄したのだけど、それにしてはガソリンの量が多くゴミの匂いが強烈(可燃物を廃棄する不安も)だったため、その反省を活かして右側キャブレター分は、慎重にガソリンタンクに戻してみた。どうするのが正しいやり方なのか、諸先輩方にお聞きしたい。

分解

諸先輩方のブログやメンテナンスブックを参照しながら、一つひとつ部品を取り外していく。「なるほどー、そういうことか。」「へー、こんなことになってんだー。」ととにかく時間を忘れて楽しめる。

ここでポイントだが、とにかく分解のあらゆる工程を写真に記録しておくことをお勧めする。私も、組み立ての際に幾つかの部品がどこに収まるのか分からず、分解時の写真を頼りに解決したことが何度かあった。どこから外したのか、どの向きでついていたのかなど、細かく記録しておけば組み立ての時の役にきっと立つはずだ。

また、多くの方が活用しているとおり、ステンレス製のトレイを活用すると、小さなネジやジェット類、Oリングなどを紛失しなくて済む。とにかく、取り外した部品は漏れなくトレイに置くようにすれば、部品を無くしたり、部品を取り付けずに組み立てたりする失敗を防ぐことができる。

洗浄

洗浄には、以下のケミカル類を使用した。キャブレタークリーナーは怖いほどにガソリン汚れが浮きあがりきれいになる。勢いよく噴き出すので、顔や服に飛び散るから注意が必要だ。しつこい汚れをキャブレタークリーナーでざっと洗い落とした後は、パーツクリーナーが活躍する。入り組んだ場所などを使い古しの歯ブラシなどでこすり、パーツクリーナーを吹きかければ、たいていの汚れがきれいになる。経年のヤレ感は残ってしまうものの、薄汚れたキャブレターがみるみるきれいになっていく様子は、本当に気持ちが良い。

キャブレターは、細かなガソリンの経路がたくさんあって、それらがきちんと洗浄されていることを確認するためにも、エアコンプレッサーなどで吹き飛ばしたいところ。手軽なエアダスタースプレーでも十分に活躍するので、おすすめだ。

全てのネジ・部品類を一つずつ丁寧に洗浄していると、R100RSへの愛着が増していく。

内部はガソリンや煤が付着したような汚れが多少はあったものの、肝心のガソリンの経路が塞がったりするような状態にはなく、前オーナーが定期的にきちんとメンテナンスしていたことが窺えた。

ただ、徹底的に洗浄しても、長年の蓄積により落としきれない汚れがあるので、いつか新品の部品を取り入れながら、さらなるリフレッシュに挑戦したい。大事にされてきた様子はあるものの、メンテナンスの履歴が正確には分からないので、次回はジェット類も新品に交換したほうが良いかもしれない。次回の楽しみだ。

組み立て

随分前にMotobinsで調達していたリビルドキットを活用。これは、ダイヤフラムとガスケット、Oリングが一式同梱されているもので、消耗品をリフレッシュできる。今回、Oリングは一部に明らかな硬化と破れがあったため、状態を問わず全て更新したが、ダイヤフラムについては著しい硬化や破れの様子がなかったので、ケチって更新しなかった。

また、ニードルバルブの先端に段付きがあったため、Motobinsに発注。ただ、今回は待ちきれないので次回のリフレッシュの際に更新しようと思う。

分解のところでも書いたが、写真や諸先輩たちのブログ、メンテナンスブックを細かく確認しながら丁寧に組み立てていく作業は、本当に楽しい。一つひとつの丁寧な作業が、きっと滑らかな乗り味につながるだろうと、楽しみでならない。あー、幸せな時間。

なお、余談ながら、組み立て作業も屋外でやることをおすすめする。洗浄までは汚れが飛び散るしケミカルも使うので屋外で作業したのだが、肌寒さもあって、左側キャブレターの組み立て作業を鼻歌まじりにリビングでやったのは失敗だった。パーツクリーナーの匂いが充満して頭痛がしたほど。「残り香」には注意が必要だ。

サンドブラストでもすれば、新品のようにきれいになるのだろうけど、素人のDIYには限界がある。それでも、取り外した直後の薄汚れた状態と比べると、見違えるようにきれいになった。

取り付け

取り付けは、取り外しの逆の手順なのでそう難しいことはないが、エアクリーナーとキャブレターをつなぐホースを歪みなくきちんと嵌めるのがパズルのようでやや難しかった。また、燃料ホースの挿入(装着)がギチギチで硬かったためシリコングリスを少しだけ塗布しておいた。

取り付けにあたっては、キャブレターを車体に固定する前に(つまり自由が効くうちに)スロットルワイヤーとチョークワイヤー先端のタイコ部分だけはキャブレターに接続しておいたほうが良い。後からワイヤーを接続するには、作業スペースが狭くて大変だと思う。

タペット調整

後に実施する同調作業では、バルブクリアランスが適正であることが前提となるため、つまりはキャブレターのオーバーホールとタペット調整はセットで行う必要があるということだ。予めシックネスゲージはAmazonで調達していたが、21mmのプラグレンチ(またはディープソケット)が手元になく、急遽ホームセンターまで調達に出かけたついでに、差込角9.5mmのトルクレンチを衝動買いしてしまったりと、今回のメンテナンス作業では何かと出費が嵩んでしまった。

初めてヘッドカバーを外してみたが、内部は想像以上にきれいで安心した。

ギアを5速に入れて、エンジン左側にあるタイミングホールを見ながら後輪を回転させ(というよりも、カクカク動かす感じ)、上死点を探る(これをクランキングというらしい)。タイミングホールから「OTマーク」が見えたら行き過ぎないように慎重に、「OTマーク」とタイミングホールのフチにある切り込みを揃える。その時点で、エンジン左右のどちらかに上死点が出ている。ロッカーアームを動かしてカタカタと動くほうが上死点が出ているほうなので、そちらから作業を開始する。ちなみに、反対側のロッカーアームは全く動かない(上死点が出ていないということ)。

排気側(左右とも車両前方、エキゾーストマニホールド側)のクリアランスを0.2mm、吸気側(車両後方、キャブレター側)のクリアランスを0.15mmで調整した。

シックネスゲージを差し込み、赤丸部分奥側の調整ナットを回しクリアランスを微調整し、最適なクリアランスを確保した状態で赤丸部分手前側のロックナットを20Nmで締め込む、というだけの簡単な作業。ただ、初めての私にとっては、調整ナットを動かさないようにロックナットを締めることが難しく、何度か失敗を繰り返しながら、最適なクリアランスを探った。最後に、排気側・吸気側ともに0.05mm追加したシックネスゲージ(排気側0.25mm、吸気側0.2mm)が差し込めないことを確認して作業完了。

再びクランキングを行い、次に「OTマーク」が巡ってきたところで、反対側に上死点が出ているので、先ほどと同じ作業を行う。

前回、いつ調整されたのか(購入時にレッドバロンで調整してくれたのか?)分からないが、クリアランスはかなり狂っていたので、やりがいのある作業であった。

同調作業

まずは、アイドリングで1,000回転を維持するよう左右のスロットルストップスクリューで調整する。キャブレターを車体に取り付ける前に左右のスクリューがストッパーに当たる位置で調整しているので、何となくいい感じ(感覚?笑)だったので、そこからだいたい1,000回転を維持するように左右のスクリューを微調整。

そしてバキュームゲージにて負圧を確認する。今回、Amazonで1つだけ購入し、水槽ポンプ用の二股で切り替えて2気筒分のチェックを行った。はっきり言って使い方がさっぱり分からないので、完全に我流で挑戦。バキュームゲージをキャブレターにホースで接続すると、ゲージの針が振れまくって何のことやらさっぱり分からない。そこで、試しに解放側の二股の弁をグーっと絞ってやると針がピタッと止まることを発見。ただ、グーっと絞っては解放、グーっと絞っては解放を繰り返すとストップする位置が毎回微妙に異なるのは何故だろう?(何となく、単に弁を絞り込み過ぎて圧がかからなくなっているような気がしないでもない…。安物ゲージなので精度が低いのかもしれないし…笑)

左右で僅かに差があったので、バキュームメーターの数値が低い方のスクリューを僅かに緩めて同じ数値になるように調整した。まあ、何となく「だいたい揃った感じ?」という程度に。

その後、キャブの下側にあるアイドリングミクスチャースクリューでアイドリングが落ち始めるところから1/8から1/4回転ほど戻す、とのことでこれも「何となく」やってみた。キャブレターの組み立ての際に、左右とも締め込んだところから3/4回転戻しているので、この調整はやらなくてもよかったかも?なんて思いながら、一応、諸先輩のブログを参考にやってみた。

アクセルグリップストッパーで回転数1,500回転を維持しながら、再びバキュームゲージによる調整を同じように繰り返した。

最後に、アクセルワイヤーの遊びを調整して完了。どれも、イマイチ答えが分からずにやっている感じなので、まあ走ってみて、再びトライしてみましょう。

所要時間

今回、メンテ初心者の私にとっては壮大な挑戦だったので、予め工具の調達、手順の事前確認は入念に行ったつもり。とても一度の週末だけでできるとは思っていなかったので、2〜3週間を費やすつもりで挑戦。

2度目以降の所要時間(想定)は、キャブの取り外し→分解→洗浄→組み立て→取り付けまでなら左右合わせて朝から着手して1日あれば十分かな、と言った感じ。タペット調整まで含めて1日で完了できるかもしれないが、それに加えて同調までやろうとするとちょっと焦るかもしれない。ゆとりを持って、タペット調整と同調作業は別日に行えば、その日の午後からは調整済みの気持ち良い状態で軽く走りに出かけられると思う。

キャブレターのオーバーホールは、暇な週末を充実した時間に変えるためにちょうど良い作業だと感じた。

初回である今回、左側キャブレターの取り外し→分解→洗浄→組み立てにおおよそ1日を要した。もちろん、丁寧に確認しながら余裕を持って臨んだので、本来なら初めてでも1日かかる作業ではない。別の日に右側キャブレターでは朝8時くらいから開始して、WBC決勝を見ながら(聴きながら)昼過ぎまでで済んだので、おおよそ半日を要したといったところ。新品のパーツを使うなど、洗浄に要する時間が減ればもう少し早くできると思う。

走行レビュー&まとめ

いやね、もうね、控えめに言って「サイコー」ですよ。ど素人の私が、自分の手でキャブレターを分解・洗浄・組み立てして、タペット調整して、見よう見まねで”なんちゃって”同調まで行なって、おっかなびっくり走り出してみたところ、明らかにスムーズになってるじゃないですか。これは絶対にプラシーボなんかではない。

何よりも、ゼロスタートの時の感覚が明らかに変わっていて感動。これまではクラッチを繋いだ後も車速が乗るまでに僅かなタメがあって、そこからグーンと加速していたのだが、そのタイムラグが解消されて、スロットルを回した分だけ素直に加速するようになった。また、朝イチの始動直後にはスロットルを回すとエンストする症状があったが、これも改善された模様。客観的には「当たり前の状態」になっただけなのだけど、当初「クラッチ滑ってる?」なんて見当はずれなことを考えていた私にとって、今回のキャブレターオーバーホールによって、ゼロスタート時の不具合が解消したことは、嬉しくて仕方がない。

走行中の印象も全体的に振動が減りエンジンがスムーズに回るようになった感じで、ボクサーツインエンジンの真の姿を垣間見たような気がする。まだまだ本領発揮とは思っていないが、古いバイクゆえに構造がシンプルだから、自分の手で少しずつネガを解消して、ボクサーツインエンジンの真の姿に近づけていきたい。

ちなみに、アクセルワイヤーの遊び調整がイマイチだったみたいで、スロットルのあそびが大きかったので、帰宅後に再度調整してみた。こうしてセルフメンテナンスをすることで、構造がよく分かりもっともっと知りたくなる。少しの調整で印象がガラリと変わるあたりも楽しい。

さて、次は何をしよう…と思う間もなく次のトラブルが発生したのであった。それにしても、楽しませてくれるね、R100RS!(笑)

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