CT125・ハンターカブは自動遠心クラッチを採用しており、通常のクラッチレバーによる操作がない。だから誰でも手軽に乗ることができる反面、クラッチレバーがないから、乗り手側がバイクの変化に合わせて走るということができない。
つまり、カブで快適に走り続けるためには、カブの自動遠心クラッチが設計どおりに機能するよう予めバイク側をきちんと調整・メンテナンスすることがとても重要となる。
今回、初めてのクラッチ調整を行ったのでご紹介する。
不具合発生。
と言っても大した不具合ではないのだけど、2022年の秋頃から信号などで減速しながらシフトダウンをすると、ローに入る時に「ポコン」と気の抜けたような音がするようになった。
当初、「シフトダウンを多用するから、ペダルのバネでもヘタってきたかな?」と見当違いのことを考えていたのだが、調べてみるとカブヌシならば当たり前の「クラッチ調整」なる作業があるとのこと。カブヌシ2年生の私、このような基本的メンテナンスを知らなかった。
クラッチ調整は、主にはクラッチが滑るようになったり、変速ショックが大きいときなどに行うもののようだが、一部のブログなどでは、調整すべき症状の中に「ポコンと異音がする」と紹介されていた。まさにそれ。4速で走行中に、踵側ペダルを3回踏んでローにシフトダウンするとき「ガチャン、ガチャン、ポコン」って。
クラッチが滑っているとか、変速ショックが大きいといった顕著な症状はないのだけど、間抜けな「ポコン」という音は地味にストレス。
調整方法・仕組み
調整方法については、調べるとたくさんの記事が見つかる。
- ロックナットを緩める
- アジャストスクリューを右に1回転
- アジャストスクリューを左に重くなるまで
- アジャストスクリューを右に1/8回転
- ロックナットを締める
とある。作業そのものはとても簡単だけど、せっかくなので構造や仕組みを理解したくて調べてみたら、以下のYoutube動画がとても分かりやすかったのでご紹介する。
ものすごく端折って言えば、上記③でアジャストスクリューを「左に重くなるまで」回したところでリフターが波形状のプレートに接触した状態、つまり遊びがない状態。そのままだと、リフターが波形状プレートに接触した状態でクラッチを押してしまう(クラッチが滑ってしまう)可能性があるので、そこから右に1/8回転戻すことで、リフターと波状プレートに必要な遊び(クリアランス)が生じる、ということ。
なるほど。とても分かりやすい。それにしても、機械って本当に面白い。
作業と結果考察
必要な工具は、14mmのレンチとマイナスドライバーだけ。マスキングテープとマジックを使って、当初のアジャストスクリューの位置を示してみたものの、結果的にマーカーは調整前からの変化を可視化するだけで、調整そのものには必要ない。
作業そのものは、ネット上に情報が溢れかえっているので割愛するが、「左に重くなるまで」回したところ当初の位置をはるかに過ぎたため、調整の結果から「リフターと波形状プレートが離れ気味だった」ということが分かる。
シフトペダルを踏むと、波形状プレートがリフターの突起に乗り上げて、それによってクラッチが押し込まれる(クラッチが切れる)のだから、リフターと波形状プレートが離れ気味ということは、クラッチが切れづらい、または切れるのにタイムラグがある状態だったと考えられる。反対にクラッチが繋がるときは、意図したよりも早く繋がっていたものと考えられる。
正直なところ、乗っていて「ポコン」の異音のほかに違和感はなかったけれど。
それにしても、あの「ポコン」という異音がどういう理屈で鳴っていたのか、仕組みは理解したものの、いまだによく分からない。
調整後の印象
もともとクラッチが滑っていたとか、変速ショックが大きいといった明らかな不具合があった訳ではなく、「ポコン」という異音が解消されたらそれで良いと、その程度しか期待していなかったが、これが思いのほか気持ちの良い結果をもたらした。
異音はもちろん解消されたし、何よりシフトチェンジがとてもスムーズになった。嫌なショックがなくなり、加速感が強くなったようにさえ感じる。僅かな違いだが、とても気持ちが良い。きっと、波形状プレートとリフターのクリアランスが設計どおりとなり、それによって最適なタイミングでクラッチが操作されるようになったのだろう。
クラッチ調整は、とても簡単で抜群の効果を体感できるから、カブヌシの皆さんにオススメしたい。
話は逸れるが、DIYメンテナンスにも上等な工具を使いたいなぁと憧れる。レンチとかドライバーといった基本的な工具ほど既に手持ちの工具があるから、どうしても購入を躊躇してしまう。むしろ基本的な工具ほど使用頻度が高いから、良いものを長く使うべきなんだろうけど。これから、時間をかけてでも買い揃えたいな。